慢性静脈不全
トランプ前大統領が「慢性静脈不全(CVI)」という病気を抱えていると報じられました。
最近、アメリカのトランプ前大統領が「慢性静脈不全(CVI)」という病気を抱えていると報じられました。病名は少し専門的ですが、実は多くの人が悩む“足のむくみ”と深く関係する身近な疾患です。ニュースをきっかけに、ご自身の足の状態を見直してみませんか。
慢性静脈不全とは?
足の静脈には、血液が逆流しないようにする“弁”があります。
この弁が弱ったり壊れたりすると、重力に逆らって心臓へ戻るはずの血液が足に滞留し、**静脈うっ滞(じょうみゃくうったい)**が起こります。結果として次のような症状が現れます。
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夕方になると強くなるむくみ(浮腫)
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重だるさ・疲れやすさ、就寝中のこむら返り
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皮膚のかゆみ・色素沈着(黒ずみ)・かさつき
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進行すると皮膚炎や**潰瘍(かいよう)**に至ることも
「単なるむくみ」と放置しがちですが、進行性の病気であり、早めの対策が大切です。
誰に起こりやすい?
高齢者だけの病気ではありません。次のような方はリスクが高まります。
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長時間の立ち仕事・デスクワーク(販売職、看護師、コールセンター、IT職など)
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運動不足、肥満、妊娠・出産の経験
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家族に静脈疾患がある(体質)
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女性ホルモンの影響(ピル・ホルモン治療)
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長距離移動(飛行機・バス・車で座りっぱなし)
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**過去の深部静脈血栓症(DVT)**の既往
今日からできるセルフケア
小さな習慣の積み重ねが、足の将来を守ります。
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1時間に1回は立って足首を動かす(かかと上げ・つま先上げ10回)
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ふくらはぎを使う歩行を意識(早歩きや階段利用)
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就寝前・休憩時に脚を心臓より高く上げる(5〜10分)
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塩分を控え、適度に水分補給(「がぶ飲み」はむくみの原因に)
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体重管理・冷え対策(冷房環境ではひざ掛けやレッグウォーマーも
弾性ストッキングは“動くポンプ”を助ける相棒
慢性静脈不全の予防・進行抑制として、弾性ストッキング(医療用着圧)の有効性は世界的に支持されています。
足首から上に向かって段階的に圧をかける設計で、心臓への血流回帰をサポートします。
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選び方の基本
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**サイズ計測は“朝”が正解。**足がむくむ前に、足首・ふくらはぎ・(必要に応じて)大腿周径を測ります。
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**長さは症状の部位で選択。**ふくらはぎ中心ならハイソックスタイプ、広範囲の症状にはストッキングタイプも。
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圧の強さは症状に応じて。軽いむくみは軽中等度(例:15–20mmHg)、明らかな静脈不全や治療後は中等度以上(例:20–30mmHg)を医療者に相談して決めましょう。
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正しい使い方
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朝起きてすぐ着用し、寝る前に外すのが基本。
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しわ・食い込みは血流を妨げるため、均一にフィットさせます。
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注意が必要な方
重い動脈疾患や急性の心不全、急性の血栓が疑われる場合は、自己判断での着用は避け、医療機関にご相談ください。
受診の目安(こんな時は専門医へ)
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片脚だけの急なむくみ・痛み・赤み・熱感がある
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皮膚が茶色っぽく色づく、湿疹・じゅくじゅくが続く
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足首のくびれが消えるほどのむくみが数週間以上続く
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夜間のこむら返りが頻回に起こる、潰瘍が治りにくい
血管外科や静脈疾患を扱うクリニックでは、超音波検査(エコー)で弁不全の有無・逆流の程度を評価し、
圧迫療法・運動に加え、必要に応じて硬化療法や血管内焼灼(レーザー/高周波)、接着法、外科的治療などを検討します。
有名人のニュースを“自分事”に
有名人の健康ニュースは、誰かを面白がるためではなく、自分や家族の健康に目を向けるきっかけになります。
「足のむくみ」は日常的で軽く見られがちですが、放置すれば生活の質(QOL)を大きく下げる可能性も。
朝と夜のふくらはぎ周径で1cm以上の差が続く、靴が夕方きつくなる、肌色が変わってきた——そんなサインがあれば、早めにご相談ください。