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下肢静脈瘤とは

「むくみからのメッセージ」連載

◎むくみって何?

「浮腫む(むくむ)」と「腫れる(はれる)」の違いについてご存知ですか? 国語辞典をひもときますと、「浮腫む」は水気などがたまって体の一部あるいは全体がはれて膨れること、「腫れる」は炎症や打撲などで、体の一部が異常に膨れることと書かれています。

そういえば、「朝になったら顔が腫れていた」というと虫歯の悪化や寝ている間に蚊に刺されて顔の一部が赤く膨らんでいて、そこがかゆかったり、痛そうな状態を思いおこしますよね。

でも、「朝になったら顔が浮腫んだ」というと、顔全体やまぶたが腫れていますが、痛みやかゆみは感じない状態を指すことが多いと思います。この違いは、いったい何なのでしょう?

どちらも皮膚がふ膨らんだ状態ですから、皮膚の下に何かがたまっていることがわかります。固いものが触れる場合は、「腫瘤しゅりゅう」といって通常の皮下組織(主に脂肪)とは異なるものがあって、皮膚が盛り上がっています。例えば、血や膿(うみ)のかたまり、良性や悪性の腫瘍、リンパ節などがあります。しかし、固いものが触れずに、平たく盛り上がっている場合は、水分、血液やリンパ液などの体液か、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、グリコサミノグリカンなど)の異常な蓄積のことが多いです。一般的には、「浮腫む」や「腫れる」とは後者の場合を指します。

「腫れる」とは何らかの刺激(虫刺され、打撲など)により局所に血が集中してたまった状態で、その刺激がなくなると消えていきます。しかし、「浮腫み」はむくんでいる局所とは関係ない別の理由で、広い範囲の皮膚が平たく盛り上がる状態です。ですから、木を見て森を見ないと、別の病気が隠れていることを見過ごしてしまいます。

外来でよく見かける「浮腫み」は何といっても、足のむくみです。そして、足の青い血管が透けて見えると、下肢静脈瘤だと思われている方がたいへん多くいらっしゃいます。

「むくみ」は何で起きるのか、どのような種類があるのか、「むくみ」の出る場所によりどのようなメッセージがあるのかを知ることで、みなさん自身で病気を早期発見したり、予防することができるかもしれません。

これから始まる新シリーズでは、「むくみ」からのメッセージをわかりやすく解説していきますので、ご期待ください。

◎むくみは何で起こるの?

むくみはなぜ起こるのでしょうか?

一般的なむくみは血液の流れとの関わりがあります。血液の流れとは、心臓をスタート地点とした往復の循環のことで、血管を通して全身へ酸素や栄養を輸送したり、いらなくなった老廃物を運び出したりする物流を指します。

みなさんの手首にある脈の触れる血管は動脈といって、例えるなら配送センターからご家庭に生活物資を運ぶトラックが通る道路です。だから、その道が何らかの原因で封鎖されると生活必需品が運ばれなくなり、生活に支障が出てきます。

心筋梗塞や脳梗塞はこのようにして、心臓や脳の細胞が死んでしまった状態です。動脈は血管の壁がやや厚く、皮下の脂肪の中を通っているため、皮膚の上からは見えません。

でも、みなさんの手や足の甲などに青く見え、指で押さえると簡単に押しつぶせる血管がありますよね。これは静脈といって、家庭から出たごみを運んでくれるごみ収集車に当たります。

家庭ごみは、燃えるゴミと燃えないゴミに分けて収集されますが、静脈もすべての老廃物を運ぶわけでなく、リンパ管と呼ばれる別の道を通るものと分別されます。

ごみ収集車が何日もお休みとなる年末年始は、みなさんのご家庭のごみはどうなっていますか?

生ごみは臭いを放ち、いっぱいになった燃えるごみの袋が何個も転がっていませんか? この状態が、からだの「むくみ」です。

言い換えると、みなさんのご家庭がからだの細胞で、家の中にごみがたまっている状態がむくみとなります。

からだには休日はありませんので、ごみ収集車が通る道である静脈の流れが悪くなれば渋滞となって、定期的なごみの収集ができなくなります。

これが、足の甲から上に向かってだんだんむくんでくる原因です。静脈を流れる血液は雨どいにたまっている水のように下にとどまりやすいので、体の中で一番低いところからむくみます。

一般に、むくみの原因となっているものは血液の中にある水分で、流れがよどむことで血管の壁から染み出てしまい、脂肪の中に池のようにたまっている状態です。

しかし、むくみはそんなに単純でなく、いろいろな病気との関わりが出てきます。次回は、そのむくみの種類についてお話ししましょう。

◎へこむ? へこまない?

裏に隠れた重い病気も

 

皆さんは足のむくみを経験されたことがありませんか? 「今日は仕事で一日中立っていた」「オフィスでずっと座っていた」という方、「今日は友達の家にお邪魔して椅子に座ってお茶を飲みながら長く話をしていた」という主婦などさまざまですが、足のむくみは同じように出てきます。

そんなむくみに皆さんはどうやって気付くのでしょう。例えば夕方、靴下のゴムが食い込んで、くるぶしの上辺りに線のようなくぼみができたり、靴をしばらく脱いでいた後で再び履こうとすると、何となく抵抗を感じることがありませんか?

でも、次の日の朝になると、元に戻っていることがほとんどですよね。これが最も多く見られる「へこむむくみ」です。

普段は皮下には石垣を積んだように細胞があるため、指で押しても簡単にはへこまず指のあとがつきません。

しかし、水分がたまると皮下組織(主に脂肪)が薄く割れたような状態になり、そのすきまに水が入り込んで皮下の厚さが増してきます。そのため、たまった水分がクッションになり押さえると水が移動してへこみますが、離すと次第に元に戻ってくるのです。このむくみは水分の取りすぎに注意し、下肢のマッサージや運動、弾性ストッキングを履くことなどで、ある程度改善できます。

でも、日常生活でいくら気をつけても改善できないむくみがあります。

これが指で押しても「へこまないむくみ」です。水とは違うゴムのようなドロドロ成分が皮下にたまるため、へこみません。ドロドロ成分とはもともと皮下脂肪の中にあるものが、ごみの収集車に回収されずにたまってしまい、悪臭を放っているようなものです。

例えば疲れやすかったり、いつも眠かったり、物事を忘れやすく、計算が鈍くなったりした経験がありますよね。

そこに皮膚が乾燥して夏でも汗をかかなかったり、声がしわがれ、毛が抜け、脈が少なく、便秘や体重が増えてくると、甲状腺機能低下症が疑われます。

体の一部だけに出てくるへこまないむくみの場合は、リンパ浮腫の可能性もあります。ほとんどが外科手術の後に起こるもので、リンパの流れが障害されてリンパ液が大量にたまった状態です。

リンパ液にはタンパク質が豊富に含まれており、水よりドロドロしているため、押してもなかなかへこみません。むくみはへこみ具合によって重い病気が後ろに隠れている可能性があるのです。

 内臓の病気があるかも

むくみは「へこむ」、「へこまない」で、違いがあることをお伝えしましたが、ほとんどのむくみはへこむむくみです。つまり、血管の外にたくさんの水分がたまっているのです。

人の体の水分量は体重の大体60%です。体にある37兆個の細胞の中の水分(細胞内液)はその3分の2ですから、細胞の外にある水分(細胞外液)は体重の20%くらいです。

血管やリンパ管の外にある水分は、細胞と細胞との間に存在するため「間質液」と言われ、細胞外液の8割くらいあります。この間質液のたまりすぎがへこむむくみの原因なのです。

毛細血管から染み出る水分量と戻る水分量が通常は同じですが、バランスが崩れると間質液が増加します。毛細血管の血液は静脈へと集められて、心臓へ流れていきます。

もし静脈の血流が滞ると、毛細血管で血液は交通渋滞を起こし長くとどまってしまいます。これが染み出る水分量を増やし、逆に戻る水分量が減る原因の一つなのです。

むくみが最も多いのは足ですよね。人は立って生活をしていますので、地球の重力に逆らえず、体の血液は一番低いところにある足にとどまりやすいのです。ですから、足を心臓の高さくらいに高くすると、静脈の血流はよくなり足のむくみは解消されやすくなります。

みなさんも、朝になったら足のむくみがなくなっていたという経験をお持ちでしょう。寝ている姿勢が足の静脈の流れを良くしたのです。ただし、姿勢によりむくみの場所が移動するものは、内蔵の異常が隠れていることがあります。

人には足に血がたまらないようにする力が備わっています。それが「第二の心臓」と言われる足の筋肉です。

特にふくらはぎの筋肉には「筋ポンプ作用」があり、静脈の血流を作る原動力になっています。活動的に歩いている方は足のむくみが起きにくいと言えます。

では、足だけでなく、顔や腕も同じようにむくむ場合はどうでしょう。

顔は心臓より高いですから、地球の重力はむしろプラスに働くため、さきほどの説明は合いません。このタイプは姿勢に関係なく出るむくみで、内蔵になにか異常があるメッセージなのです。

このように、体はむくみの場所や姿勢による移動により、皆さんに内蔵の病気を知らせています。むくみのある方は、ぜひ確認してみてください。

◎水分とむくみの密接な関係

取り過ぎに注意が必要

 

今年も全国で厳しい暑さが続きました。暑さ対策では「水分を多く取れ」と言われます。これは暑さで汗を大量にかくと体から水分が抜けるため、血液がドロドロになって脳や心臓の血管内に血の塊ができることを防ぐためです。

でも、飲み過ぎると体重が増えて足がむくんできます。水分の取り過ぎで血液が水分を蓄えてしまい、毛細血管から水が染み出やすくなるからです。安易な水分補給は体に負担をかけるのです。

人には不感蒸泄(ふかんじょうせつ)といって、汗とは別に知らないうちに体から蒸発していく水分があります。

たとえば体重が60キロだとすると、全身の皮膚から600ミリリットル、口から吐いた息から300ミリリットルの合計900ミリリットルが1日で失われています。

このほかに、尿として1300ミリリットル、便として100ミリリットルが抜けていきますので、水分のバランスを取るためには一日に2・3リットルが必要になります。

一方、体の中では栄養分が利用されるときにできる代謝水が300ミリリットルほど作られるので、口から取る水分は食事も含めて2リットルとなります。その人の生活環境や体重にもよりますが、食事以外で大体1~1・5リットルの水分で十分です。

気温が30度から1度上がるごとに、不感蒸泄は15%くらい増えるそうです。さらに汗をかけば、その分の水分は補給しなければなりません。

エアコンで涼しい部屋に長くいる場合は不感蒸泄や汗は少ないわけですから、必要以上に水分を取ることはお勧めできません。

夜間、暑くない寝室であれば、寝る前にコップ1杯(1合程度)の水分を飲むだけで十分です。

朝起きたときや食事前にコップ1杯の水分を取ると、便秘にならず胃腸の動きを活発にして、体のバランスが整うことでむくみを予防します。

水分補給はできるだけ水かお茶で行い、汗を多くかいたときはナトリウムやカリウムなどの電解質の補給も忘れないでください。ただし、スポーツドリンクには糖分も含まれているので、飲み過ぎると、のどの渇きを起こします。

また、いちどきに1リットルくらいの大量の冷えた水分を取ると、胃腸の血流を悪くし体調不良の原因にもなります。

水分はむくみと密接な関係があります。水分の取り方を間違えるとむくみをさらに悪くすることを頭に入れておきましょう。

◎尿のチェックが大事

腎臓の病気発見も

からだの水分が増えると、むくみが出てくることをお話してきました。

ところで、体内の水分を主に調節しているのはどこでしょう?

健康な方では、水分を調節している場所は腎臓です。腎臓は臓器の中で最も血液の流れる量が多く、血液中の老廃物をろ過して、尿として体の外に排せつしています。

そのほかに、腎臓には体内の総ナトリウム量(塩分)や血管の外へ水分の染み出す力となる浸透圧、さらに血液を弱アルカリ性に保つなど体液のバランスを調節する作用、造血機能や血圧を調節するホルモンを分泌する作用、活性型ビタミンDを作ってカルシウムの吸収を助ける作用など数多くの働きがあります。

腎臓によるむくみの場合、水分のたまり過ぎが原因のことが多いです。

その腎臓の状態を静かに語っているのが尿なのです。まず、ひと目でわかるのが尿の色です。褐色のような濃い色の尿は腎臓で血液をろ過している糸球体や尿細管など腎臓の中で出血している可能性があります。

一方、鮮やかな赤い色が混じる場合は,膀胱膀胱(ぼうこう)や尿管など腎臓の外で出血している場合が多いのです。

腎臓からの出血だと腎臓がんを心配する方が多いと思いますが、急性腎炎でも出てきます。

もう一つ、よく耳にするのがタンパク尿ですね。タンパク質そのものには色がありませんが、尿が濁ったり泡立ったりすることが多くなります。

むくみに関係するタンパク尿で最も多いのが腎性タンパク尿です。糸球体でろ過された尿には、タンパク質のような大きな物質はわずかしか出てきません。

しかし、この糸球体の異常により、普通は出ることはないアルブミンのような大きなタンパク質が尿中に排せつされてしまうと、血液中のタンパク質が減ってしまい、薄くなった血液の水分が血管の外へ染み出やすくなってしまうのです。

これは症状がなくても、糖尿病や膠原病膠原病(こうげんびょう)などによる慢性腎臓病が隠れていること知らせる重要なサインなのです。

なお、生理的なタンパク尿もあり、発熱や妊娠、激しい運動でも一時的に出ますので、すべてが異常というわけではありません。

このように、皆さんがむくみを自覚したら、足の血管の検査だけではなく、尿をチェックするだけで、自覚症状がなくても腎臓の病気を早期発見できるかもしれません。

◎心臓とむくみの関係

心不全や弁膜症など

 

腎臓で尿が作られないと、むくみやすくなることをお話ししました

尿は血液の中の水分量を反映しており、尿が出ないと血液は水分で薄まってしまい、全身の血液量が増えます。

その結果、過剰な血液が下肢に停滞するため、下肢のむくみになるのです。つまり、下肢からの血液の排出困難が原因であり、心臓に向かって血液が流れる静脈性の循環障害といえます。

一方、下肢には動脈性の循環障害があり、心臓から下肢のすみずみまで血液が行き渡らない状態があります。その中で、閉塞性動脈硬化症といって、心臓から出た血液が動脈の中が狭くなることで、末梢へ届かない供給障害があります。

この場合、足は血液が枯渇している状態ですからむくむことはなく、色が青ざめ痛みが出てきます。お年寄りで長い間この状態をわずらうと、足の筋肉は衰えミイラのように骨と皮しか目立たなくなります。花壇に水や肥料をまかなくなると、草花が枯れていくのと同じですね。

全身の循環を担っているのは心臓のほかにありません。心臓には収縮機能といって、血液の流れを作るポンプ作用があります。心臓は一度大きく膨らんで血液をいっぱい含んでから、ギューと縮んで動脈へ噴射するように血液を送ります。

この力が落ちてしまった状態が心不全です。心臓から血液が抜けていかないため、心臓は膨らんでレントゲンで見ると心拡大を起こしています。皆さんの中に、医療機関で心臓が大きいといわれた方がいると思いますが、この状態がある可能性があります。

心不全といっても、心臓の筋肉の縮む力が落ちている場合と、弁が狭くなり血液の通りが悪くなったり、壊れて手からすり抜けるように血液が漏れたりする場合があります。心臓の縮む力が落ちている場合は、心臓の筋肉の血流が悪い狭心症や心筋梗塞、筋肉の縮む力が弱まっている心筋症が疑われます。

一方、弁の動きが悪くなったものは心臓弁膜症です。これらの状態は腎臓の血流が低下して尿が作られないだけでなく、血液が全身に停滞するため、むくみの原因となるのです。むくみは、このような心臓病の存在を教えてくれるメッセージなのです。

このほかに、心臓には末梢から血液を汲み上げる力もありますが、それについては次回お話ししましょう。

 

◎心臓の汲み上げポンプ機能

心臓が全身へ血液を押し出す力が落ちると、全身の血流が停滞して心不全が起きることをお話ししました。

これは左心不全といって、全身へ送る血液の流れを作る心臓の第一エンジンである左心室の調子が悪い状態なのです。

しかし、心臓に還ってくる血液の流れが悪い心不全もあるのです。これを右心不全といいます。

心臓は左右に分かれて動脈と静脈の血流を作り出しているのです。

足から還ってくる心臓の玄関口は右心房といって、体の中で一番太い大静脈が2本つながっています。ここが前室となり、三尖弁(さんせんべん)を通って第二エンジンである右心室に入り、収縮することで肺へ血液を送ります。

このとき、右心室が膨らみ、三尖弁が開いて、右心房から血液が入り込みます。空になった右心房には、全身から還ってきた大静脈の血液が流れ込みます。

つまり、右心室は静脈の血液を汲み上げている効果があるのです。心臓よりずっと下にある足の血液を井戸にたとえると、右心室は手押しの汲み上げポンプに当たるわけですね。

汲み上げポンプが故障すると、心臓より下の部分に血がよどむことになります。

体の最も低いところにある足からむくみ始めますが、次第に上半身へと広がっていきます。おなかの中に腹水がたまって、カエル腹のように膨らんでいる状態もその症状の一つです。

右心不全も左心不全と同じように、血液の量が多すぎる場合と右心室の機能不全による場合とがあります。

血液が多すぎると、右心室の処理の能力が追い付かなくなるため、下半身に血がたまりやすくなります。右心室の故障は、三尖弁が漏れてしまう三尖弁閉鎖不全や心筋梗塞などで起こります。

右心室から出た血流は、肺を通過して左心室へと戻っていきます。

つまり、左心室への血流が障害を受けても、右心室の機能は低下するわけです。これには僧帽弁と呼ばれる心臓弁の障害のほかに、左心室が血液を十分に蓄えて全身へ押し出す能力も影響します。

このように足のむくみの原因となる血流のよどみは、心臓の血液汲み上げ効果の低下も原因の一つとなります。

もし、足以外のむくみや息苦しさがある場合は、ぜひ医療機関で相談してみてください。

 

◎肝臓の働きとも関係

足(脚)のむくみと肝臓になんの関係があるのかと思われる方が多いと思います。

 肝臓はご存知のように沈黙の臓器と言われており、自覚症状が出にくいのが特徴です。症状も黄疸(おうだん)や腹痛などは想像がつきますが、足のむくみはちょっと考えも及ばないですよね。

 肝臓は体内の化学工場と言われる通り、体に必要な栄養分を利用したり、老廃物を分解したりするところです。

 体の栄養状態を示すものに、血液中のアルブミンというタンパク質があります。全身のアルブミンのうち、約40%が血液に含まれ、血液の中のタンパク質のうちの約60%を占める最も多い栄養分です。

 アルブミンには膠質浸透圧(こうしつしんとうあつ)といって、血液の水分を維持する働きがあります。ですから、アルブミンが低くなると水分を維持することができなくなります。

 そのため、毛細血管の薄い壁から血液のなかの水分が染みだして、むくみが出てくるのです。

 このほかに、アルブミンにはカルシウムや酵素、ホルモンや脂肪酸などと結合して、体が必要とする部位へ運んだり、毒物と結合して体への作用を弱める働きがあります。

 このアルブミンは食べ物から得られたアミノ酸を材料として、一日に10グラム前後が肝臓で作られています。

 従って、肝硬変などの重症肝障害を起こすと、アルブミンの合成ができなくなり、腹水や足のむくみが出てくるのです。

 血液中のアルブミンは、肝臓だけでなく腎臓も関係してきます。

 腎臓はアルブミンが体外に漏れないように、糸球体という毛細血管の塊でフィルターのように漏れていくのを防いでいます。しかし、このフィルター機能が壊れると、血液から尿にアルブミンが流出して体外へ抜けてしまいます。

 このように足のむくみは、肝臓で作られるアルブミンと腎臓で失われるアルブミンのバランスで決まるわけです。

 また肝臓には解毒作用がありますが、アルコールは体からみれば毒の仲間に入ります。中高年の男性は飲酒の機会が増えますが、アルコールの分解が落ちるような肝機能障害になると、今までお話した理由でむくみ(肝臓浮腫)が出てきます。

 男性は女性より足のむくみは気にしない傾向がありますので、お酒の好きな方は気を付けてください。

◎むくみやすい女性

黄体ホルモンが関係

女性はむくみを経験された方が多いと思います。実は女性は男性より4倍くらいむくみが出やすいと言われています。どうしてでしょうか。

まず女性は生理前から生理中にかけて体がむくんできます。これは女性の体をコントロールしている女性ホルモンが関係しています。

排卵前は卵巣ホルモンが多く分泌され、女性らしさが最も際立ち、むくみにくい時期です。

しかし、排卵後に黄体ホルモンが分泌され始めるとむくみやすくなるのです。このホルモンには血管拡張作用があり、全身の血管を開くことで血流が停滞して水分がたまりやすくなります。また、むくむことで体温が下がりやすくなり、さらに血行が悪くなるのです。

生理の時はこれらのホルモンが急激に低くなるため、その変化に体が追い付けなくなります。これが脚のむくみなどの体の不調やイライラ感などが出る月経前症候群と言われるものです。

また妊娠すると、血液の水分が50%前後も増えると言われ、血液が薄くなりサラサラになります。これは赤ちゃんの命をつなぐ胎盤の循環を良くするためです。

でも、これが妊娠中のむくみを起こす原因にもなります。また大きくなった胎児は、お母さんのおなかの静脈を圧迫し、脚からの血液が戻りにくくなり、静脈の高血圧を起こします。これも血管からの水分の染み出しを促してしまうのです。

脚の筋肉量が少ないことも女性がむくみやすい原因です。脚の筋肉は「第二の心臓」とも言われています。筋肉が血管をもむことで脚の循環が良くなります。そのためには、歩くことが筋肉の一番の運動になります。

皆さんは1日どのくらい歩いていますか。厚生労働省の統計によると、平均歩数は男性が7100歩、女性が6300歩だそうです。男性より筋肉量が少ない女性は、積極的に歩くことがむくみの解消法となります。

このほかに、きつい下着やハイヒール、先の細いパンプスなども血流やリンパの流れを滞らせ、筋肉の動きを妨げるため、むくんできます。

最近はお酒の強い女性が増えています。アルコールには利尿作用があるため、一時的に体は脱水状態になります。最初は体が水分バランスをとりますが、酔いが深くなると脳の調節機能が低下して水分が過剰状態になります。極端なダイエットも急激な栄養不足で体がむくんできます。気を付けてくださいね。

◎薬とむくみ

副作用に注意が必要

 

さて、自分は非常に気を付けているのに、むくみがどうしても取れない方はいませんか。

しかも、最近病院でもらった薬を飲んでいたら、むくみが出てきたことはないですか。病院でもらった薬だからそんなはずはない、むくみの治療で飲んでいる薬だから気のせいだろうとか思っている方はいらっしゃるはずです。

実は薬の副作用でむくみが出ることがあるのです。皆さんがよく飲む風邪薬や胃腸薬、お酒を飲みすぎて肝機能が悪くなった方に処方される薬にはグリチルリチンという成分が含まれています。

これは、甘草(かんぞう)の根に含まれている有効成分で、漢方にもよく使われています。人工甘味料としても多くの食品にも含まれています。

この成分には副腎皮質から分泌されるアルドステロンというホルモンに似た作用があります。このホルモンは腎臓でナトリウムの再吸収を促す作用があり、同時に水分の保持を起こします。

ですから、過剰な薬の服用はむくみの原因になるのです。この場合、このホルモンは体内で分泌されていない訳なので、偽性アルドステロン症とも言われています。

むくみには体の水分を排除することが一番ですので、利尿剤がよく処方されます。でも、過ぎたるは及ばざるがごとし。この利尿剤もむくみの原因になります。

利尿剤は飲みすぎると、脱水症状が体のあちらこちらで起こります。それが腎臓にも現れると、腎機能が悪化して水分の排出ができなくなり、むくみへと転じてくるのです。もちろん、その前にめまい、だるさ、脱力感、動悸など多彩な症状がでます。この薬を飲んでいて似た症状がある方は、主治医とよく相談してください。

腰や膝が痛くて病院通いされている方も多いと思います。痛み止めの中で最も使われているのが、非ステロイド系鎮痛薬です。最近では医師の処方箋なしで、薬局でも買えるようになりました。副作用は胃腸炎が最も多いのですが、腎血流低下と尿量減少をもたらし、むくみを起こします。

他にもホルモン薬、抗うつ薬、抗がん薬、高血圧薬でむくみが現れることがあります。

でも主治医から処方された薬は勝手にやめないでくださいね。せっかく、病気を治し、進行を遅らせる目的で飲んでいるのですから。むくみが見つかった、必ず主治医と相談してください。

◎リンパとむくみ

リンパ節郭清と浮腫

 

指で押してもへこみができないむくみはリンパ液がたまっている可能性があることを以前お話ししました。

一般的には、リンパ管、リンパ液、リンパ節を総称して「リンパ」と呼ばれています。リンパ管は細胞の老廃物を回収する通り道で、血管に入り込めないような大きな成分が流れています。

リンパ管はリンパ節と呼ばれるソラマメ状の丸い膨らみを通過します。

例えば足の指先をけがすると細菌が中に侵入します。すると、血液中を巡回していたリンパ球(偵察隊)が集まってその細菌を認識し、リンパ節にいる仲間のリンパ球(自衛隊)へ通報して免疫抗体(迎撃用の兵器)を作ります。

細菌はいきなり血液の中には入りませんので、何も知らずにリンパ管の中を攻め込んできます。リンパ節ではすでに迎撃の準備はできていますので、細菌が来てもリンパ球と免疫抗体により、細菌は鎮圧されるのです。

このデータはリンパ節に記憶され、同じ細菌が攻めてきてもすぐに抗体を作ることができます。これが免疫と言われるもので、皆さんの体を外敵から守っているのです。

がんの手術でリンパ節郭清(かくせい)という言葉を聞いたことはありませんか。

がん細胞は血管やリンパを通って転移していきます。手術の時に一緒に取ったリンパ節にがん細胞があるということは、そこまでがん細胞が広がったことを示します。

がん転移を防ぐには、がん細胞が拡散した所までの通り道をすべて破壊する必要があります。これがリンパ節郭清です。

ただ、例えば乳がん手術で広くリンパ節郭清を行うと、わきの下や腕のむくみが出てきます。これが手術後リンパ浮腫で、物理的にリンパの通り道がなくなった訳ですから、なかなか治りません。

最近では過剰なリンパ節郭清を防ぐために、センチネルリンパ節といって第一関門となるものだけを調べて、問題がなければ郭清を縮小する方法が開発されています。

全身のリンパはリンパ節を無事通過したあと、深部リンパ管を介して静脈につながり心臓へ戻っていきます。有名なのは鎖骨下にある静脈角ですが、他にもわきの下や足の付け根の鼠径(そけい)部や膝のうしろ膝窩(しつか)に静脈への入り口があります。

手術をしていないのにへこまないむくみがある方は、この入り口に向けて皮膚を優しくさするリンパマッサージをしてください。

◎脚の血流障害

さあ、今回からは脚(足)のむくみの本丸に入ります。脚のむくみは毛細血管の血流だけに異常が起こることは少なく、それが集まり心臓につながっている静脈の血流異常が主な原因です。

すなわち、血流が静脈でよどんでしまい、静脈の血圧が上昇することがその発端になります。

道路が渋滞する様子を想像してみてください。交通量が多い坂道の道路では、信号の数が多かったり道幅が急に狭くなったりすると、車はノロノロ運転になりますよね。

この信号に当たるのが静脈弁です。静脈弁は重力で下に落ちようとする血液を支えて、心臓の方向のみに血流を流す逆流防止弁の働きがあります。

心臓より下にある下半身の静脈弁はおへそより下の静脈に行くほど数が多くなります。ですから脚の表面を走る表在静脈や膝下の静脈の静脈弁は、体の中で最も多いわけです。足のくるぶし辺りは血液がたまりやすい所なので、静脈弁を増やすことで血液のくみ上げ効果を図っているのですね。

心臓へ返る血流の原動力となっている筋ポンプ作用は、筋肉の周囲を走る深部静脈にあります。

従って表在静脈の血液はそのままでは心臓にたどり着けません。そこで、穿通枝(せんつうし)と呼ばれる抜け道を通って、深部静脈へと流れていきます。もちろん、この穿通枝にも静脈弁はあるんですよ。

静脈弁が壊れると、心臓方向に上がった血液がまた下に落ちてしまい、前に進めません。信号で交通が止められている状態と同じですよね。

表在静脈でこれが起こると、穿通枝を通って深部静脈へ流れ込みます。しかし、この血流が増え過ぎると、筋ポンプ作用が追い付かなくなり、脚に血がたまりむくみの原因になります。また、この状態が続くと表在静脈には下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と呼ばれる静脈の「コブ」をつくるのですが、それは別の回に説明します。

一方、静脈が塞(ふさ)がっている状態は、道路が狭くなった場合に例えられます。もし、足の太い静脈が血栓(血の塊)で詰まってしまうと、血流は脇道の細い静脈をゆっくりとすり抜けるしかなく、渋滞が起こってしまいます。これが、深部静脈血栓症によるむくみです。

この血栓は、血流に乗って肺の血管に詰まることがあり、場合によっては死に至る病気につながります。次回は、その深部静脈血栓のお話をしましょう。

◎忍び寄る血の塊

今回は、血の塊が血管の中にできるお話です。血液の塊を血栓というのですが、その原因は血管の内側の壁(血管内膜)が傷つくこと、血流がよどむこと、血液が固まりやすい体質―の三つです。例えば脳血栓は脳動脈の動脈硬化により血管内膜が傷ついて、そこに血栓ができて血管を塞いでしまうのです。

血管内膜の損傷には、手術や外傷、膠原病などによる血管の炎症などがありますが、原因がわからないものもあります。

血流のよどみをなくすために脚には静脈弁がありますが、ふくらはぎにあるヒラメ筋静脈だけにはありません。これは袋状になっているためヒラメ静脈洞とも呼ばれており、ヒラメ筋に押されて心臓と同じように血液を駆出します。ヒラメ筋が収縮しないと、袋の中の血液がよどんだままとなるため、血栓ができてしまうのです。これを深部静脈血栓症といいます。

このよどみは、寝たきりの姿勢でいるときによく見られますが、一般の生活の中でも、全く歩かずに長時間立ったままでいるか、椅子に座っている姿勢でも起こります。

血液が固まりやすい体質とは、血栓ができないように働くタンパク質が生まれつき足りないか、膠原病などによる自己抗体で血栓ができやすくなることです。

最も多く見られるのは、血液がドロドロ状態になって血液濃縮するために起こる血栓です。ほとんどの場合、水分補給不足、嘔吐、下痢などによる脱水症状が原因です。

皆さんは、エコノミークラス症候群という病気を聞いたことがありますよね。飛行機に乗らなくても長時間の車の運転や災害による避難所生活でも起こりうるのです。

このメカニズムは、静脈血栓塞栓症という考え方で説明されています。

まず脚の運動不足による血液のよどみと水分不足からくる血液のドロドロ状態からヒラメ静脈血栓症(深部静脈血栓症)が起こります。

その状態で歩き始めると、ヒラメ筋の収縮で血栓がはがれ静脈血流に乗って肺へ移動し、肺の血管を詰まらせる肺血栓塞栓症を起こすのです。

症状は呼吸困難や胸痛です。動悸や冷汗、意識消失なども起こり、最悪の場合、突然死もあります。ご高齢、太り気味、糖尿病、下肢静脈瘤、喫煙、産後1カ月以内、大きな手術後2~3カ月以内の方は注意が必要です。

予防法は、こまめに歩くなど足の運動をすることと水分の補給です。

 

◎下肢静脈瘤って何?

足にボコボコとした血管の膨らみができる病気が最近よく耳にする下肢静脈瘤です。

この病気は古代エジプトの文献に書かれた「下肢にできるヘビのような膨張物」に始まると言われています。

有名なのが古代ギリシャのアスクレビオス神殿の奉納版に彫られた「ブドウのような塊」がある脚のレリーフです。

下肢静脈瘤は、静脈弁がうまく閉じることができずに、足先に向かって血液が落ちていくことから始まります。

当然、上に向かって流れてくる血液と衝突します。ここに血液の渦ができるのですが、上下方向は血液の流れで抑えこまれているので、横方向へと血液が逃げていきます。それが静脈の壁に強く当たるため、壁が瘤のように膨らむ訳です。

下肢静脈瘤ができやすい三つの条件は、長時間にわたる立ちっ放しや椅子での仕事、女性、そして遺伝です。特に両親に下肢静脈瘤があると、子供へは90%遺伝するとされ、女性への遺伝は男性の2・5倍だそうです。

下肢静脈瘤は弁不全が起こる静脈の深さにより4種類に分けられます。

皮膚の中の毛細血管が拡張したクモの巣状静脈瘤、皮膚の真下にできる1㍉前後の網目状静脈瘤は皮膚から浅いところにあるため、血液の色が透けて青く見えます。

一方、皮膚から離れて皮下脂肪の中にある伏在静脈自体が膨らむ伏在静脈瘤、そこから分岐して周囲に枝のように伸びていく側枝静脈瘤は2~10㍉と太いですが、色は透けてみえません。その部分が盛り上がって、足にミミズやヘビが巻きついたようだったり、ブドウの房のようにボコボコに見えるのです。

血が透けてみえる静脈瘤は美容面を除けば、医学的問題はありません。下肢静脈瘤は血管が膨らむだけが問題ではなく、下肢に血をため込む「うっ血」の引き金になることが問題になります。

下肢静脈瘤の中に血栓ができることがあります。これらは血栓性静脈炎といって、皮膚の上から固く触れたり、痛くなったりします。しかし、この血栓がどこかへ飛んでいくことはありません。

むしろ、下肢静脈瘤による血流不全でため込まれたヒラメ静脈の血液にできた血栓の方が、肺へ飛んでいく可能性があります。足に静脈が浮いてなくても、太ももの大伏在静脈に弁不全がある隠れ静脈瘤もあるので、足がむくんだら医師に相談してください。

 

◎なかなか治らない皮膚症状

下肢静脈瘤は血管が膨らんだり、足がむくれたりするだけの病気ではありません。実は血流の渋滞である「うっ血」が体をむしばみ始めています。これを最近では慢性静脈不全と呼んでいます。

内側のくるぶしの上辺りの皮膚がむずむずとかゆくなり、湿疹のようなものができたり、焦げ茶色の色素が増えてきたりしている方はいませんか。

こうした皮膚症状は次第に増えていき、膝下全周に及ぶことがあります。まるで茶色のハイソックスを履いたような感じになります。これらは慢性静脈不全の皮膚症状で、うっ滞性症候群とも呼ばれています。

その原因は、下肢静脈の高血圧にあります。静脈の血圧は簡単に測ることができないので、あまり知られていません。

一般に静脈圧は心臓の高さを基点(ゼロ)とします。正常な方が立っている姿勢では、足のくるぶし辺りで80~100ミリHgの静脈圧がかかっています。

ですから、足の甲の血管が浮いているわけです。逆に寝そべって足を高く上げると心臓が低くなるため、ゼロからマイナスになり足の血管は縮んで見えなくなります。

立った状態から歩き始めると足の筋ポンプ作用が下肢静脈に働き、速やかに血液が心臓へ戻り始めて30ミリHgまで下がります。つまり、立っていた時の血のよどみが解消されたわけです。

しかし、下肢静脈瘤のような静脈弁不全があると、運動をしても静脈圧は60ミリHgくらいにしか下がらず、常に足全体が高い静脈圧にさらされてしまいます。

静脈圧が高くなると毛細血管の流れが悪くなり、組織に血液がよどみます。これにより、皮膚の新陳代謝が落ちてしまい、老廃物が蓄積して慢性炎症のような変化が出てきます。

そして、その炎症が皮膚細胞を刺激して色素沈着を起こすのです。紫外線を浴びると、日焼けするのと似ています。

さらに静脈圧が上がってくると、皮膚や脂肪組織が委縮して固くなる脂肪皮膚硬化症が起こり、引き返すことができなくなります。

その行きつく先は皮膚がただれてくずれる皮膚潰瘍なのです。

長年にわたり治療してきたにも関わらず皮膚症状が改善しない場合には、このような血流障害が原因であることがあります。一度、近くの医療機関で下肢静脈血流の検査を受けることをお勧めします。

◎治療ピラミッド

下肢静脈瘤の本態は、表在静脈の弁逆流で下肢静脈の高血圧が起こり、血がよどむことで血栓や皮膚病変を引き起こすことにあります。血管の膨らみは、あくまでも見た目の問題にすぎません。

治療法には、体に傷をつけない保存的治療とそれ以外の侵襲的治療に分けられます。保存的治療は皆さん自身でできる治療ですので、多くの方にお薦めできます。

しかし、その効果は限定的であるため、本格的に治すには侵襲的な治療が必要になります。

治療効果が限定的または副作用が出やすい治療から、効果が高く副作用も少ない治療へと治療レベルが進化するさまを、私は「治療ピラミッド」と呼んでいます。

その底辺が保存的治療である圧迫治療です。足首から段階的に圧力を下げて圧迫する弾性ストッキングがあり、脚(足)のむくみに対しては膝下までのハイソックスタイプがよく使われています。

一番むくみやすい膝下の表在静脈やその周辺の組織を圧迫することで、深部静脈への血流増加をさせて足に血がたまらないようにしています。

しかし、足首以下を圧迫しないレギンスタイプは、足の甲の静脈血流を滞らせてむくみがでますので注意が必要です。

弾性ストッキングは医療機関で計測した足のサイズに合った医療用のものがお薦めです。足がむくむ前、朝の仕事前から日中に履き続けることがポイントです。ただし、しわを寄らせないなど正しい履き方をしないと、皮膚の血行や神経障害が出ますので、わからないときは医療機関に相談してください。

その上のレベルに来るのが、硬化療法です。いわば注射で硬化剤を直接静脈の中に注入する方法です。硬化剤は静脈の中で炎症を起こして、内部を糊のようにくっ付けて静脈をつぶすのです。細い針を使いますので、傷はほとんどわかりません。

しかし、複数回の治療が必要であることが多く、炎症を起こした後の色素沈着や再発しやすいので、医療機関での説明をよく聞いてください。

一番上のレベルに来るのが手術です。以前はストリッピングといって、2個所の皮膚を切開して、ワイヤーに静脈を縛り付けて引き抜く治療が標準術式でした。

しかし、2003年ごろからレーザーファイバーや高周波カテーテルを静脈の中に挿入して、血管の内側から熱で焼きつぶす血管内焼灼術が広がり始めました。

血管内焼灼術 負担すくなく 

下肢静脈瘤治療ピラミッドの頂点に立つのは、外科手術とカテーテル治療のどちらでしょうか。従来は皮膚に1センチ以上の傷をつけて静脈を引き抜くストリッピング手術が標準的な治療でした。

皆さんは、下肢静脈瘤の手術といえば、足にできているボコボコとした

血管を取るものと思っていませんか。

もちろん、大きな静脈瘤や血栓ができているものは直接メスを入れて取ります。しかし、手術の目的は足のうっ血の原因となっている弁不全のある静脈の治療なので、必ずしも目に見える静脈だけが対象とは限りません

主に治療する血管は太めの表在静脈で、太ももの内側にある大伏在静脈とふくらはぎの小伏在静脈が多いです。これらの静脈弁不全は、ボコボコと見える静脈瘤よりも心臓側にあります。つまり、血のよどみの原因である心臓側の静脈逆流を治さなければ、静脈瘤は治すことができません。

ストリッピング手術は逆流を起こしている静脈を取り去って、それより下にある静脈のよどみをなくす治療です。下肢の表在静脈には、たくさんの迂回路がありますので、血管が一本なくなっても平気なのです。でも、動脈や深部静脈の場合は簡単にはバイパスができないため、気をつけなければなりません。

従来、この手術をすると入院をしたり、手術後の痛みや青あざに悩まされたりしていました。それでも静脈を裏返しにして引く抜く術式になってからは、かなり改善しています。しかし、ふくらはぎの小伏在静脈では神経障害を起こすので、お勧めできません。

そこで新たに登場したのが血管の内側から行う血管内治療です。特に静脈を熱で焼きつぶし、体に負担をかけない血管内焼灼術が、国際ガイドラインでも第一選択になってきました。

血管内焼灼術は、近赤外線レーザーによる治療と電波の一種である高周波による治療があります

。どちらも光ファイバーや高周波カテーテルを焼灼する静脈の中に挿入して行うため、ストリッピング手術のような傷や痛みが少なく、日帰り手術が可能となりました。

最近ではストリッピングと比べて、治療の有効性は同等で副作用はかなり少ないことが分かってきました。すなわち、血管内焼灼術の方が治療ピラミッドの頂点にあると考えられます。

どちらの血管内焼灼術も保険診療で受けられますので、安心して医療機関にご相談ください。

◎下肢静脈瘤の治療時期は?

脚(足)の血管がボコボコしていると、誰が見ても下肢静脈瘤であるとわかりますよね。でも、すぐに治療が必要なのかわからないという方は意外と多いと思います。

血管の膨らみにもさまざまなレベルがあります。女性はスカートのため、青い筋が見えるだけでも心配されて受診される方がいます。男性は皮膚病変がかなり進行しないと受診されないようです。

治療が必要と判断されるものには、医師が判断する医学的適応と、皆さんの強い希望による社会的適応に分けられます。

膨らんだ血管の中に血栓ができたり、くるぶしの上辺りの皮膚が黒ずんだりカチカチに固くなってきたらレッドカードです。すぐに医療機関で検査をして治療を受けた方が良いでしょう。

しかし、青や赤い血管が透けて見えるだけの場合は判断が難しいと思います。これらの血管は皮膚の中、または皮膚の直下にある静脈が膨らんで見えているだけなので、ほかに症状が出るような血液の停滞を起こさないからです。一般の医療機関では病気としては相談に乗ってもらえないこともあるでしょう。

欧米では、クモの巣のように見えるこのような毛細血管拡張を「スパイダーベイン」と呼んでいます。これは膝を挟んだ太ももやすね、くるぶしの下辺りや膝裏にもできやすく、悩んでいる女性が多いと思います。この状態を美容だけの問題と片づけてしまってもいいのでしょうか。

スパイダーベインは、それより深い層にある表在静脈の弁不全と関係することがあります。毛細血管が膨らむ原因は、弁が壊れるというよりも毛細血管内の血圧が上昇していると考えられます。毛細血管はもともと薄い壁の血管ですので、内部の圧が上がると簡単に膨らんでしまうのです。

毛細血管の血圧は、その源である表在静脈の血圧の影響を受けます。表在静脈を川の本流に例えれば、毛細血管はその支流と言えます。大雨で水かさが増した本流から支流への流れが増えれば、その支流も決壊して周囲の住宅へ冠水していくのと同じ原理なのです。

つまり、スパイダーベインはその源流である表在静脈に隠れ静脈瘤がある兆候かもしれません。

特に脚のむくみが目立ってきた場合は脚に血がよどんでいることが多く、その原因が隠れ静脈瘤である可能性があります。スパイダーベインにむくみがある場合は、ぜひ専門の医療機関で検査を受けてみてください。

◎下肢静脈瘤の予防法

最後に下肢静脈瘤の予防法をまとめましょう。

下肢静脈瘤ができる原因は、静脈弁の破綻による血液の停滞でした。従って下肢静脈瘤を予防するには静脈弁を壊さないことや下肢からの血液の排出をよくすることが必要になります。

脚(足)の付け根より心臓側の静脈圧が上昇すると静脈弁自体に負担がかかります。この負担が静脈弁破壊へと進んでしまうのです。

実は、最も多い原因が肥満です。おなかの内臓脂肪が増えてくると、心臓に向かう太い下大静脈を圧迫し、静脈血流の邪魔をします。その影響が脚の付け根の血液の停滞を引き起こして、下肢の静脈圧が上昇します。

女性は矯正下着や妊娠などで同じことが起こります。特に出産時は息みにより過剰な静脈圧が発生するため、静脈弁が容易に壊れてしまいます。

むくみがひどい妊娠期の女性は静脈圧上昇から脚を守るため、弾性ストッキングを夜も履くことが必要になるでしょう。

静脈弁が壊れたら、次にできることはむくみの予防と同じように、下肢に血液を停滞させないことです。最も簡単な方法は脚を心臓よりも高く上げることですが、これでは社会生活はできません。そこでお勧めするのが、下肢の圧迫療法と骨格筋ポンプの活用です。

適切な医療用弾性ストッキングを履くと、逆流がある表在静脈は押しつぶされて血液は深部静脈に流れていくので、脚には血液がたまりません。

最も効果的なのは骨格筋ポンプの活用です。ふくらはぎの筋肉をできるだけ動かすのです。長時間の立ち仕事は下肢静脈瘤の原因になりますが、椅子に座っていてもあまり変わりません。こまめに歩くか、つま先立ち運動などを1時間に1回はしましょう。女性はハイヒールだけでなく、ウオーキングシューズも履いてください。ハイヒールは足を細く見せますが、ふくらはぎの筋肉を緊張したままにするため、静脈血流を悪化させます。

隠れ静脈瘤の段階であれば、これらの方法で見た目にはあまりわからない状態で進行を止められます。血管の膨らみがあったとしても悪化させずに経過を見ることができます。ひどいむくみや皮膚に変化が出てきたら、そろそろ限界です。