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2018.06.14 クロワッサンVol.28 足がむくんで、だるいんです。【40歳からのからだ塾WEB版】https://croissant-online.jp/health/59253/   こむら返り

からだクロワッサン

Vol.28 足がむくんで、だるいんです。【40歳からのからだ塾WEB版】

  • 文・及川夕子 イラストレーション・小迎裕美子

一日中デスクワークが続いた日や立ちっ放しだった日、お酒を飲み過ぎた翌日などは、足がむくんだりだるくなることがありますよね。
一方、慢性的なむくみや、足のむくみに加えて熱っぽさや痛みなどがある場合は、下肢静脈瘤などの病気のサインかもしれません。
今回は、足のむくみの原因が病気かどうかの見極め方やむくみの解消法などを、心臓血管外科医の榊原直樹さんに聞きました。
気になる足のむくみは、水分のとりすぎなのか、はたまた病気か、チェックする方法も紹介します。

足のみくみが気になる。これは下肢静脈瘤?

心臓血管外科医師の榊原直樹さんによると、足のむくみの原因は多岐にわたります。下肢に血管のコブやむくみが起こる下肢静脈瘤、心不全、腎臓・肝臓の機能障害といった病気が原因の場合もあれば、単に水分のとりすぎの場合も。

「先日クリニックへいらした年配の女性は、足のむくみや重だるさで悩んでいて来院されました。お話を伺うと、健康のために意識して水分を多くとっていると言います。さらにフルーツを好み、梨を1日に何個も食べていました。水分摂取は大切ですが、自分にとっての適量を知ることもまた大事です。その患者さんは、水分を適度な量に調整することで、足のむくみが解消されました。足のむくみ=下肢静脈瘤とは限らず、生活習慣を見直してみることも大切ですね」と榊原さんは言います。

どうして足はむくみやすいの?

では、どうして足はむくみやすいのか。そのメカニズムから見ていきましょう。

まずは血管のしくみを知る必要があります。
ご存知のように、血管には、心臓から血液を全身に運ぶための動脈と、全身の血液を心臓に戻すための静脈があります。
「動脈と静脈では、血管の構造も血液の流れ方も異なっていて、全身の血液の約13%が動脈を流れ、約64%が静脈を流れています。血圧が危険域にまで下がっても、人間はしばらく生きていられるのですが、それは動脈と静脈を流れる血液量が1:1ではないからです。静脈には血液を備蓄するバックアップ機能があるため、流れがゆっくりで血液が停滞しやすい血管と言えます」と榊原さん。

「むくみ」は毛細血管から染み出てきた水分が溜まった状態

次に、水分がどのようにして下肢にたまっていくのかをみていきましょう。
「毛細血管は体中の細胞に酸素、水分、栄養の明け渡しをしていますが、水分は毛細血管から血管外へと染み出し、細胞と細胞の間にたまります。染み出した水分は、10〜20%ぐらいがリンパ管へと流れ、残りは静脈が再吸収し回収します。ところが、水分が体に過剰に供給されたり、何らかの理由で静脈の流れが悪くなったりすると、水分の回収・排出が追いつかずに、脂肪組織に留まりむくんでしまうというわけです」(榊原さん)
リンパだけを流してもむくみは解消せず、静脈を流すことが重要なのですね。

下肢のむくみの正体は「下肢静脈の高血圧」

押すとへこむ、下肢のむくみの正体は「下肢静脈の高血圧」

下肢は心臓から遠く下にあるため、海に例えると深海のように高い圧かかります。結果、血流が停滞し水分が戻りにくくなり、むくみが慢性化しやすいのです。

資料提供:東京血管外科クリニック

むくみで受診が必要になるのはどんなとき?

〜病気かどうかの見分け方その1〜

水分のとり過ぎもあれば、病気が原因のむくみもあり。むくみの原因は、押してへこむかどうか、症状が局所か全身に出ているかで大きく4つに分類できます。下の表で確かめてみましょう。

むくみの原因と特徴

「むくみは局所か全身か、押すとへこむかどうかで、ある程度むくみが起きている原因がわかります」(榊原さん)

資料提供:東京血管外科クリニック

心配のないむくみ? それとも下肢静脈瘤?

〜病気かどうかの見分け方その2〜

足のむくみが気になるときは、ココをチェック!

●生理的なむくみ

  • □ 朝と比べて夜の体重が1.5〜2kg以上増えている
  • □ 就寝中にトイレに行きたくなる(横になることで、血液循環や水分循環がよくなり、尿がたくさん作られるため)
  • □ 朝はむくみがスッキリする
 などの特徴があれば、生活習慣で治る生理的なむくみと考えてOK

●受診したほうがよいむくみ

  • □ 朝起きたときにむくみが戻らない
  • □ 血管が大きくふくらんでいる
  • □ ひざ下のむくみや赤く腫れた痛みがある
「3つに当てはまる場合は、下肢静脈瘤や血栓症などの病気の可能性が高くなります。専門の医療機関を受診しましょう。さらに、朝起きたときにむくみが戻らない症状は、腎臓、心臓、肝臓など、内臓性の病気の可能性も考えられます。この場合も念のため医療機関を受診しましょう」(榊原先生)

下肢静脈瘤は女性に多い

榊原さんによると、下肢静脈瘤の4大要因は、①妊娠・出産、②長時間の立ち仕事やいすに座りっぱなし、③加齢、④肥満などの体質。女性は、筋肉量が男性に比べて少ないため、足のポンプ作用が弱く、足に流れた血液がより心臓に戻りにくい→男性よりも足がむくみやすいといえます。また、妊娠中は赤ちゃんの重さでおなかの静脈がつぶれてしまい、下肢静脈の高血圧が起こりやすくなるそうです。そのほか、立ち仕事など足を動かさない職業や肥満によりなりやすい人もいます。

下肢静脈瘤の予防&ケアにもなる!
専門医が教える「自分でできるむくみケア」

最後に、自分でできるむくみケアを紹介します。「血液を心臓に送るため足を高くしたり、足の筋肉を鍛える体操などが効果的です」(榊原さん)

  • ●テレビを見るときなどは、足を高くする(フットレストなどに足をのせる)
  • ●寝ながら手足を高くして、バタバタさせる運動をする
  • ●長時間デスクワークが続くときや歩けないときには、時々貧乏ゆすりをする(足にとっては “健康ゆすり” になる)
  • ●弾性ストッキング(下肢に圧力を加え、血流改善を促すストッキング)を履く。医療用がお勧め。最近は、ドラッグストアなどでも簡易用は扱っています。
  • ●水分摂取は適量に留める

一般的な食生活の人で、1日1.8〜2リットル程度の水を食事からとっています。対して、尿として排出できる水分は1日1.5リットル程度。ほかに自然に蒸発する汗などの水分や便の水分が、各500cc程度です。水分の排出量は、実は限られているので、それ以上の水分をとれば、当然むくみにつながります。食事以外で水を大量にとっていたり、果物など水分が多いものをとりすぎているなら控えましょう。

テレビの情報番組などでは、高齢者の方に向けて「水分補給は大事、水をたくさんとりましょう」というメッセージがよく流れます。暑い季節には、熱中症予防と対策のため、確かに水分摂取が大切ですが、空調の利いた部屋でじっと動かずに過ごす人と、屋外で過ごす人、アスリートのように運動量の多い人では、必要な水分量はかなり違ってきます。ということで、今回は「水分摂取は自分の適量を知ることが大事」という榊原さんの言葉がポイントだと思います。細胞間に染み出した水分をより多く回収しているのは、「リンパより静脈」ということも印象に残りました。

次回は、下肢静脈瘤についてより詳しくお伝えします。重症化すると皮膚にも症状が出るそうです。最新の治療法なども紹介しますよ。